第16回創立記念講演会 ご報告

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〇日 時:2023年5月22日(水)<講演会:16:00~17:30、交流会:17:45~19:00>

〇場 所:富国生命ビル4FまちラボAルーム

〇参加者:28名(会員:25名、事務局3名)

司会進行 大河内基夫 事務局長           

今年も大河内事務局長の司会で「創立16周年記念講演会」がスタート。

開会挨拶ならびに活動報告

〇智の木協会 小林 昭雄 代表幹事

小林代表幹事より本日ご欠席の寺谷理事長に代わり、本智の木協会創立16周年記念講演会に参加された会員の皆様に対して御礼の挨拶あった。

続いて、今年5月にスタートした「日本森林医学会」の活動、特に森林浴と健康の医学的なエビデンスに基づく未病・治療効果や、今後国内での保健適用の可能性について詳細な紹介があった。また、本協会の設立趣旨と「日本みどりのプロジェクト推進協議会」の“MIDORI”を世界に発信するという方向性との親和性、さらに5月4日に扇町公園で開催した「みどりのサンタウオーク」への会員参加に対して謝辞を述べられた。

終わりに、「日本森林医学会」や「日本みどりのプロジェクト推進協議会」などと連携した今後の智の木協会の各種事業活動に対して、会員の皆様への協力依頼があった。

創立16周年「記念講演」

 

〇講 師:和歌山大学 観光学部長 教授 大浦 由美 氏

〇演  題:「観光と森林」

本日は、「観光と森林」というテーマでお話をさせていただきます。私は、東京生まれ埼玉県のふじみ野市というところで育ちまして、その後、信州大学農学部に入りました。サラリーマン家庭の出身で農業にも縁遠いのですが、当時自然破壊の問題が非常に社会的にクローズアップされた年で、環境が付く学部はありませんでした。自然豊かで私の友人も受けると言うことで信州大学に入りました。

私は、農学部林学科の専門課程に進み、森林経済学、森林政策学、山村経済学を専攻しました。当時から林業そのものを研究対象にしたわけではなく、森林空間を観光やレクリエーションとして活用すること、山村を一つの産業としての観光、森林資源の保全、地域資源としての活用などを研究テーマにしています。

和歌山大学観光学部は、2007年に国立大学では初めてできた学部です。日本のこれからの産業は観光だとなった時には、人材育成が必要であるという考えのもとでできました。国立大学の中で唯一、学部から博士後期課程まで一連の観光教育を研修者養成まで行うカリキュラムを持っている大学で、2016年からのグローバル化の進展に歩調を合わせて、国連のアフィリエイトメンバーにもなり活動を続けています。今、我々が目指す観光は、受け入れる観光という立場で日本の中で確立していくことが必要です。 ここ10年取り巻く環境は大きく変わりました。観光関連の課題は、「住んでよし、訪れてよしの街づくり」、「観光で地域再生」、「文化との接点」の3つ。これに加えて持続可能な観光地域運営のあり方です。我々は、この地域に観光客を受け入れた時に、皆さんが地域に最大限満足してくれて、そして自然環境もダメージを受けない形で維持されるという観光地域マネジメントに取組んでいます。そのために産業、観光全体を見渡しながらいかに持続可能な観光地を牽引していくかということを考えられる人材育成に努めています。観光の定義で最もシンプルな定義は「非日常空間への移動を伴う自由な鑑賞・創造・交流活動」です。自由な時間に行うことがレジャー、ただ日常でも我々はレジャーを楽しんでいます。

2000年代に入ってからは、着地型観光が登場します。このニューツーリズムは、大きな開発を伴わなくても、これまで作った宿泊施設を上手くつないで、小さな観光を地元主導でやる着地型観光がこれから中心になってきます。ここで森林資源を使った活動であるエコツーリズムのようなものが一つのコンテンツとして意識されるようになり、近年では農村や森林で自分の自己実現ができるのではないかと飛び込んでくる若者もいます。森林に対する認識も大きく変化してきました。森林空間のアメニティ、心地よさ、森林空間を活用したレクレーションの価値がこの恵みとして捉えられてきました。

 今、森林資源をどう活かすかという議論になっている時代です。一方は、林業のできるところを集約化して、能力のある事業体に任せて林業の大規模化、工業生産性を重視して外材に対抗する国産木材を成長産業にするという取組みです。他方で、地方発ではありますが、様々な森林の姿や産業の違いなど地域の特性に合った方法で木材を育てる品目少量生産や、林業事業者だけではなく多様な人々が森林・林業への関わり、森林が持っている様々な価値を山村観光と組み合わせてサービス産業として確立しつつあります。最近では、森林浴や森林セラピーの科学的なエビデンスを背景に離職率低下ややりがいを引き出す集合研修なども行われています。

ここで、先行的に国から補助金を受けて森林サービス産業化に取組んでいる信濃町の事例を紹介します。信濃町では、滞在型でしかも通年型ツーリズムとして“癒しの森”構想を立ち上げました。これは企業をターゲットにして沢山の人に来てもらうのではなく、何回も来てもらう人をまず獲得しようというのが構想のポイントです。今現在、30社くらいの企業の健康保険組合と協定を結んで継続的な活動を進めています。

その中からワーキングスペースやキッズスペースの設置等を通じて地域での新しい会社や仕事づくり、雇用の創出に繋げています。 また、信濃町以外の地域でも、若い人を小規模な林業の担い手として育成しつつ、移住定住促進施策として、地域おこし協力隊として3年間の正規雇用でシェアリングを繋いで行こうということを仕掛けています。このスマート林業は、観光業との相性がよく、森林以外にも川を使った観光業などが日本各地で展開されています。

 最後に、持続可能な社会の実現には、社会改革が必要だと言われていて、今までの常識を壊さないと到底達成できないと思います。それには、新たな社会価値、社会的価値を創造し、世界に今までのような大量生産・大量廃棄のようなものではない、時代を感じさせる価値を創造しなければ人の価値観も変わりません。そこで重要なのが観光ではないかと考えております。例えば、Well-Beingについての多様なビジョンや、森を身近に感じられるライフスタイルを観光を通して、森林や山村に興味を持ってくれた人に日本を観光したいという価値観を伝えたいと思います。観光には、社会的価値を創造できるという特徴的な特性があり、人間の多様化や大きな社会的な課題、森林の課題等にも対応できるものと確信しています。

会員交流会

講師の大浦教授も交えて会員交流会を開催した。智の木協会企業会員である(株)シクロケム寺尾社長の乾杯のご発声の後、参加者から本日の講演に関する質問・感想、近況について発言があった。交流会は新メンバーも加わり、和気あいあい、楽しく有意義な会であった。

(株)シクロケム寺尾社長)
(食事や飲み物を楽しみながら歓談する交流会の様子)

                              以上

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