- 開催日時: 2020年8月29日 14時-16時
- 開催場所: テラプロジェクト Aゾーン
- 参加者: 個人会員:8名(内リモート参加3名)
外部参加:5名
事務局 :5名 - 話題提供者 :前大阪府立環境農林水産総合研究所 理事長 内山哲也氏
- 談話会
「 チョコレートの歴史 プラス-チョコレートの歴史/三大発明とベルギー- 」
チョコレートは、カカオの実から造られる。カカオは、アオギリ科テオブロマ属の常緑樹で、中央アメリカから南アメリカの熱帯地域が原産地と考えられている。
テオブロマはギリシャ語で、「神の食べ物」を意味する。原産地に近い、メキシコ南部には紀元前2000年から遺跡にカカオの痕跡がある。カカオはペースト状に磨り潰され、薄められ液体で飲まれた。カカオは強壮のために飲まれ、カカオを飲めるのは上流社会の人々であった。ココア豆100粒は、奴隷一人と同じ価値があった。
1521年にアステカ王国がスペインのコルテスに征服されると、カカオがスペインを経由して、フランス、イタリアに伝わり、ヨーロッパに広まった。ヨーロッパでは、希釈されたカカオペーストが撹拌機で泡立てられ、砂糖、牛乳、バニラ、シナモンが加えられた。ヨーロッパでも、チョコレートは王侯貴族、上流社会の贅沢で優雅な飲み物であった。
カカオは、人類が液体で食べ始めて3500年後に中南米からヨーロッパに伝わった。その後、350年間ヨーロッパでもカカオは、チョコレートとして飲まれ続けた。固形のチョコレートが生まれたのは173年前であり、その歴史は浅い。
現在の固形のチョコレートが生まれるためには、➀ココアからの油脂の除去法、➁固形チョコレート、③ミルクの付加法、④コンチェの発明が必要であった。
1828年に、オランダのVan Houtenがカカオペーストからココアバターを搾りだす圧搾機を開発した。この圧搾機は、カカオペーストのココアバター分を55%から23%に下げることができた。
ココアバター分が減ったカカオペーストはココアパウダーと呼ばれ、粉末に加工しやすくなった。 油分が少なくなりココアが飲みやすくなった。
1847年に、イギリス人Josef Fryが固形チョコレートを発明した。飲むチョコレートはココアパウダーと砂糖をお湯に溶かしていた。ジョセフ・フライはお湯の代わりに、ココアマス(カカオペースト)と砂糖にココアバターを加えた。
すると、冷やすと室温では固体になり、口の中では体温で溶けるという固形のチョコレートができた。フライが発明した固形チョコレートは、ダークチョコレートでミルク分が入っていなかった。
ダークチョコレートにはココアバターが多く含まれているので、水分の多いミルクを加えることが出来なかった。1875年、スイス人のDaniel Peterは、近所のネスレが開発した粉ミルクを加えるこで、ミルクチョコレートを生み出した。
同じスイスで、1879年にRodolph Lindtがチョコレートを滑らかにするコンチング(精錬)法を開発し、その機械であるコンチェを発明した。
スイスで固形チョコレートが完成した頃、日本は明治の初めであった。1873(明治6)には、岩倉具視の使節団がフランスのチョコレート工場を視察した。
1877(明治10)には東京で米 津凮月堂が 日本最初のチョコレートを製造し、1909(明治42)には 森永製菓が板チョコレートの製造を開始した。
その後、1918(大正7)に明治製菓が、1923(大正12)に神戸の マカロフ・ゴンチャロフが 、1931(昭和6)にモロゾフ (神戸)がチョコレートを製造販売した。
カカオは、緯度が20度以下の熱帯で栽培されている。世界の生産量は約400万トンで、西アフリカと中南米が産地である。栽培地が似ているコーヒー豆の生産量は、980万トンである。
カカオ豆の主な生産国は、コートジボワール(195万トン)、ガーナ(80)、インドネシア(32)、エクアドル(22)などである。日本の輸入量は、4万トンである。日本は、ガーナからの輸入が多い。品質が良いのは、ベネズエラ産のカカオである。
カカオの花は、枝ではなく木の幹に直接咲く。このため、ラグビーボールのようなカカオの実も、幹になる。実は、厚さ1センチ以上の堅い殻で覆われいて、その中にパルプと呼ばれる甘く白い果肉に包まれて30~40粒のココア豆が入っている。
カカオには、クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種の三種類がある。
クリオロ種の豆は白く、最も品質が良いとされている。
産地では、収穫後に殻を割りパルプと一緒にココア豆を取り出して、発酵させる。発酵では、アルコール発酵や乳酸発酵、酢酸発酵が起こる。発酵後に天日干しで水分数%まで乾燥してから、輸出される。
チョコレートの生産では、先ず輸入したココア豆を選別(クリーナー)して異物を取り除く。続いて、焙炒(ロースター)、風選(ウイノワー)、配合(ブレンダー)、磨砕(グラインダー)、混合(ミキサー)、微粒化(レファイナー)、精錬(コンチェ)、調温(テンパリングマシン)する。この後、型に入れてチョコレートとなる。
ココア豆は、中南米で数千年に亘って滋養強壮を目的として摂取されていた。チョコレートにも、ポリフェノールがもつ健康効果である動脈硬化防止、がん予防に加えて、ストレスに打ち勝つ、アレルギーへの効果、ピロリ菌の殺菌効果が認められている。
一方で、砂糖(約50%)やココアバターに由来する脂肪を多く含むので、太る、虫歯になるなどのデメリットも指摘されている。
日本のチョコレート消費量量は2㎏/人・年である。一方、ヨーロッパで消費量は、ドイツでは11㎏、スイスでも10㎏、ベルギー6㎏であり、日本よりも多い。
都道府県別の国内生産量は、大阪府が第2位の埼玉県の2倍近くで、ダントツの1位である。これは、府下で不二製油とグリコの工場が稼働しているからである。
ベルギーは、人口1千万人の小国で国民一人当りのGDPは日本と同額である。民族的は、ゲルマン系とラテン系が融合していて、大柄の人も小柄な人もいる。歴史的に周囲の大国(英独仏)から何かと抑圧されてきたので、人には親切である。
交通の要衝に位置するので、英語に加えてドイツ語、フランス語を話せるマルチリンガルが多い。
料理は旨いが、天候が悪い。
チョコレートは安く、日本では一粒700円もするアントワープのショコラティエ”デルレイ”のチョコレートが70円で売っていることもある。
質問
Q:ホワイトチョコレートはどのようにして作るのですか?
A:ココアマスを使わずにココアバターだけで作ると、白いチョコレートができます。
Q:ココア豆の発酵では、清酒の蔵付酵母のように、酵母株が決まっているのですか?
A:いいえ、産地の雰囲気やココア豆に付着していた酵母や乳酸菌で発酵しています。
Q:ココア豆の価格が高騰する恐れはありませんか?
A:ココア豆は、1,000-3,000円/トンで取引されています。しかし、今後中国での消費が高まれば、価格が高騰する恐れは十分あります。
6. 事務局後書
コロナ感染防止対策で、受付で検温しました。座席の配置も、コの字型式ではなくスクール型式で行いました。そのためか、話題提供途中での質問が少なかったのですが、質問時間には多数の質問がありました。参加者の自己紹介の時間を取りたかったのですが、司会者の不手際で叶いませんでした。お詫びいたします。
次回は、10月31日(土)です。話題提供者は、龍谷大学名誉教授の田中滋さんで、話題は「里山・里川と”農”の今昔─里山学への誘い」です。
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