- 開催日時: 2023年5月20日(土) 14時-16時
- 開催場所: テラプロジェクト Aゾーン
- 参加者: 企業賛正会員:0社
個人会員:15名 外部参加:3名 WEB参加:0名
事務局 :1名 計:19名 - 話題提供者 :宇山 浩 氏 大阪大学大学院工学研究科 教授
- 話 題:「ポストコロナにおけるプラスティックの使命と役割~プラスティックとの共生」
<ご講演要旨>
セブン&アイグループCM ナレーション 「なぜ、私たちは暮らしを変えるのでしょうか、何をすれば、未来に優しくなれるのでしょう。循環経済社会の実現のために、セブンアンドアイグループは、皆様と一緒に答えを探しています。グループ各社のペットボトル回収本数は年間約3億3000万本。店頭で回収したペットボトルを100パーセント使用、世界初完全循環型ペットボトルリサイクルを実現、さらに回収されたペットボトルから再生紙を作り出し、快適で環境に優しい機能性インナーを開発、セブンアンドアイグループは、循環経済社会の実現に向けて、プラスチックの再資源化にも取り組んでいます。毎日の暮らしの中で、一緒にできることを明日にいいこと、繋げる、続ける。セブンアンドアイホールディングス。」
今日、お話したいことのエッセンスが詰まっているCMだと思います。ちょうどコロナが始まった頃ですね。だから2年ぐらい前の映像ですけれどあまりにいいので、皆さんに最初にご覧いただきました。
プラスチックの語源は「形をつくることができる」と言う意味である。プラスチックには高分子の塗料・繊維・ゴム・接着剤が含まれるが、一般的には合成樹脂である。プラスチックは、鉄と比べて約1/8の軽さで、この軽さの一点で重宝されている。また、一部は透明で着色が容易で、柔らかくてよく伸びる。また、低温で製造・加工できるので、製造時のエネルギー消費が少ない。しかし、鉄と比べれば、強度、耐久性、耐候性は劣る。特に強度は、鉄に比べて2桁か3桁ぐらい弱い。現代社会で必要不可欠なプラスチックではあるが、同じようになくてはならない電気と比べると大きな違いがある。電気が、火力、水力、風力、太陽光と様々な方法で発電されるのに対して、プラスチックは石油だけから作られる。
プラスチックの歴史は100年余りだが、軽くて安くて、高速成形できるプラスチックは、60年、70年で急に伸びた。用途別では、食品包装、レジ袋などの包装に40%余りが使われている。繰り返し使えない用途での使用割合が大きいことが、大きな問題である。
2015年では、日本では1000万トン弱、世界では4億トンのプラスチックが生産された。日本は、世界の約2パーセントに減少した。
ポリエチレン(PE)は、 柔らかくてしなやかなので、レジ袋・容器・ポリタンク・フィルム・ラップに用いられる。 ポリプロピレン(PP)は、高強度・高耐熱・柔らかいなどの特性を活かして、タッパウェア(密閉容器)・コップなどの容器・プランタ・注射器に加工されている。PET・ポリスチレンは、硬くて透明なので、PETボトル・卵パック・使い捨てコップ・発泡スチロールに使われている。この他にも、ポリ塩化ビニル(塩ビ)は水道配管・ナイロンは服飾・ストッキングに、フッ素樹脂(テフロン)は耐熱樹脂として、透明なポリカーボネートは温室の屋根・壁に、アクリル樹脂も透明なので水族館の大型水槽の壁に使われている。 又、優れた耐衝撃性を持つABS樹脂は、ヘルメットに用いられている。
生産したプラスチックを用途別の製品・商品とし、使用後に回収してリサイクリングによって再び製品・商品として使用できれば、プラスチックごみは発生しない。しかし、実際にはリサイクルできない廃棄物が生じ、世界で年間に約900万トンのプラスチックが陸域から海域へ流出している。2050年には、海洋中のプラスチック量が魚以上に増加すると試算もある。
プラスチックごみの発生量は、国別では中国が第1位である。一人当たりの発生量では、日本はアメリカに次いで第2位である。ただ、日本は一人当たりではプラスチックごみを多く発生させているが、適切に処理しているので環境への影響は少ない。日本の処理方法で問題なのは、燃やしてエネルギーとして利用する処理法が半分以上を占めていることである。材料として再利用する、あるいは化学処理を行って再利用する処理法が欧米に比べて少ない。エネルギーとして利用する処理法は、国際的にはリサイクルには分類されないので、日本のプラスチックごみのリサイクル率はEUと比べて低い。
中国やASEAN諸国がゴミの輸入を禁止したので、プラスチックごみの行き場が無くなった。日本で発生する900万トンの廃棄プラスチックの内、420万トンが材料としてリサイクルされている。半分以上は、コークス炉の原料、合成ガス、高炉還元剤として用いられている。残りは、再生樹脂、パレットとなっている。
プラスチックごみのリサイクルが難しいのは、同じ材質のゴミを収集しなければならないことにある。卵パックにはポリスチレン製とPET製があり、見た目では分別できない。同じようにPETボトルの蓋にも、ポリエチレン製とポリプロピレン製がある。また、食品の包装には多層シートが用いられている。食品の包装には印刷適性、ガスバリアー性、耐光透過性、シール性などを求められるので、様々なプラスチックを5-7層に貼り合わせた多層シートが考案された。レトルト食品用のプラスチックシートにはアルミも入っている。他にも、数種のプラスチックをブレンド・混合した材質、ガラス繊維で補強したプラスチックなどがリサイクルの障害となる。
容器のリサイクルの中でPETボトルは、回収されたPETボトルが再びPETボトルとなる水平リサイクルが行われている。また、回収PETボトルからペレットを作り、シート・包装フィルム・レベル類・衣料用繊維・成形品に加工するカスケードリサイクルも行われている。日本のPETボトルリサイクル率は86%で、欧州の43%、USAの18%に対して好成績である。
マイクロプラスチックは、ポイ捨てや風で散乱したプラスチックが水路や河川の落ちると、流されて海に辿り着く。プラスチックは、海で紫外線や波の力でもろくなり、壊れて微細化する。大きさが5mm以下になると、マイクロプラスチックとなり、魚が食べる。マイクロプラスチックの発生源は、化学繊維(洗濯機で衣類から発生したマイクロプラスチックが下水を通じて海に流出)が34%、タイヤ(走行中の摩耗)が28%、都市の粉塵が24%を占める。WWFのリリースによれば、ある試算では人は1週間にクレッジトカード1枚分(約5g)のマイクロプラスチックを水道水、PETボトルなどの飲料水、食品から摂取している。
バイオプラスチックには、微生物等の働きで使用後に二酸化炭素と水に分解する生分解性プラスチックと植物などの再生可能な有機資源を原料とするバイオマスプラスチックがある。いずれも、枯渇性資源問題、地球温暖化問題、海洋プラスチック問題の解決に貢献できる。生分解性プラスチックは出口機能による分類で、バイオマスプラスチックは入口原料による分類なので、生分解性バイオマスプラスチック、非生分解性バイオマスプラスチック、生分解性石油原料プラスチック、非生分解性石油原料プラスチックの4通りがある。生分解性バイオマスプラスチックとしてはポリ乳酸微生物産生ポリエステル、生分解性石油原料プラスチックとしてはポリカプロラクトン・芳香族/脂肪族ポリエステルがある。生分解性とは、土に埋めて水と二酸化炭素に分解することを言う。
分別されていない混合プラスチックからナフサの代替品を取り出す技術やバイオマス原料からバイオエチレン・プロピレンを生産する技術が開発されている。バイオマスからプラスチックの原料となるモノマーが合成できれば、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを組みあわせて、石油原料を全廃でき、プラスチックは2050年のゼロエミッションを達成できる。
以 上
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