第2回 智の泉談話会 報告

 

  1. 開催日時: 2019年9月21日 11時~13時30分
  2. 開催場所: 「社団」テラプロジェクト Aゾーン
  3. 参加者:   個人・アカデミア会員:7名
          外部参加:3名
          事務局:3名
             
  4. 話題提供者 :株式会社 甲南保険センター
    代表取締役 社長 武田一男 氏
  5. 談話会
株式会社 甲南保険センター 代表取締役 社長
I I A B 日本協会
前CEO(Independent Insurance Agents & Brokers of Japan)
現在、Executive Adviser
智の木協会 企業会員

(1)話題提供(概要)

日本では、「リスク」は危険等と訳されている。しかしリスクは一定時間が経過した時の予測と結果の差異と考えるべきである。言い替えれば、特定の状況において自然に存在する起こり得る事象の変動である。

リスクにはそのリスク事象が具現化すれば損失だけが発生し、誰も利得しない純粋危険と、そのリスク事象が現実化すれば損する人と得する人が生まれる(損失と利得が発生する)投機的危険の二種類がある。
リスクに対処するためには、リスクマネジメントを行うことが望ましい結果を生む事が多い。

まず、リスクを発見・確認・分析し、頻度、損失の大きさを測定する。
次に、対策方法を選択する。
リスクの対策方法には、損失の発生頻度と損失の大きさを削減するリスク・コントロールと、損失を補てんするための金銭的な手当てを行うリスク・ファイナンシングがあり、両者を組み合わせる。
リスク・ファイナンシングは、資金を積み立てる事や引当金等で、損失を自己負担する「保有」と保険等で金銭的な損失を第三者に負担させる「移転」とに分かれる。

日本ではリスクマネジメントの企業経営への導入が遅れていた。
従前は、リスクマネジメントの欠如に拠って生じた損失を雑損に計上し、有価証券報告書に記載していた。しかし、現在においては、リスクマネジメントを行わなかった取締役の責任が追及される時代となって来た。監査等で、株主に利益を毀損したと見做され社長等の個人の債務となり、社長の相続人が相続放棄に追い込まれる事もある。

保険は金銭的な損失を第三者に移転させるリスク・ファイナンシングの重要な手法である。
しかしながら、大正時代には保険を業となす者に対する揶揄として「袴穿きたる詐話師」と言われていた時節もあった。
現在でも、火災保険加入者から満足な保険金を受け取れずに裏切られたと思われる事例が多くある。

たとえば、建物の火災保険のケースでは、約款の比例填補条項を適用しない特約を付帯せずに契約した場合、建物の保険価額と建物に付保された保険金額の割合に損害金額を乗じて、損害保険金が支払われるため、仮に建物の保険価額が1億円の建物に全焼する事は無いからとの理由で5000万円を建物保険金額として契約した場合は、罹災が在り建築業者の復旧のお見積りの金額が2000万円と積算された場合、上記の計算式から分母が1億円、分子が5000万円となり損害金額が2000万円と積算されているので、受け取れる損害保険金は半分の1000万円となり、5000万円も掛けているのに何故1000万円しか貰えないのと言った不満が常に出ることになる。

この事柄の原因は幾つかあり、常識的な時価について認識の錯誤が在る。
時価とは建物であれば以前に建てた時の建築金額ではなく、現在の新築費が基準となり、古い建物だから保険金額も低いとの錯誤がある。現在は殆どの契約が新調達価格基準で契約でき、尚且つ実損を填補する契約を選択できる環境にある。
保険に入る(保険を購入する)時には、先ず、リスクマネジメントの初期段階であるリスク・サーベイ(リスクの発見・確認・分析と頻度・損失の測定)を行い、リスク・サーベイの結果に基づいて、特約等を決める事が重要である。

例えば、落雷損害においては、その損害の殆どが基本約款で担保されているが、什器備品等ではCPUのハード・ソフトは別のカバーが必要で、火災保険では不担保となっている。
近年は集中豪雨や台風に拠り各地で水害が発生している。
浸水すると汚水(下水)が床下や床上に入り込み、水が引いた後も堪えがたい臭気が残る。黴の発生や臭気を損害と見做す特約の付帯が必要となり、特約の付帯が無い場合は多額の費用の発生となる。

また、最近は自治体や学校の推薦に拠り、自転車保険が販売されている。
しかしながら、自転車保険の多くは自転車に搭乗中のみの加害責任を担保する契約であり、自転車を手押ししている時や駐輪後の転倒事故は担保の対象外とされている。従って混みあった歩道で自転車を手で押している時に、人に衝突させ相手を負傷させても補償はされない。
同様に、一本脚スタンドで駐輪している自転車が転倒し、たまたま歩いていた小児にぶつかっても補償されず、自転車をその場に駐輪した者や自転車の所有者等が治療費等を負担する事となる。 リスクには、思いもよらない事がある。

企業・団体の継承にも大きなリスクがある。
例えば、宗教法人が反社会的な団体に狙われて、墓が無縁墓地に整理されて墓地が切り売りされている。
保険会社は、自社に有利な事しか顧客に告げない事がよくあるので、「保険会社を信用してはいけない」、企業であれば「上の立場でも、契約書は必ず自分でチェックする(部下が読んでいると思っていると、落とし穴に墜ちる)」事が必要である。

(2)質問など

Q.河川沿いの宅地を購入し家を建てる場合に注意すべき特約について教えてもらいたい。
A.宅地を造成する前の地図で、以前の土地の状態を確認する事が重要である。
 古地図等があれば、洪水歴や土地の履歴がある程度判る時がある。
 本来は、宅地購入前にすべきである。

Q.傾斜地のマンションで、降雨が多いと近くの側溝から水が敷地内に入り込む。
対策をマンション管理組合で協議するが、方法が解からない状況で終わってしまう。

A.先ず、側溝の所有者・管理責任者を調べる事が重要である。
 側溝の草取りや土砂の掃除は大切で、管理を怠ると側溝や桝(ピット/会所)から溢れた水が法面を崩したり、場合に拠っては建物基礎部が洗われたりする。
 阪神間で多い傾斜地の宅地においては、宅地造成で切り盛りした後の切土地盤か、盛土地盤かで地盤の強さが全く異なる。
 可能であれば、盛土地盤の宅地やマンションを購入しない方が望ましい。
 切土地盤か盛土地盤かは、宅地造成前の地図や古地図で調べる事が出来る。

事務局後書

話題提供(概要)の他にも、日本人がお人好のために、日本の保険会社が海外で騙されたり、大きな損害を被ったりしたお話を聞かせいただきました。
 その繋がりで、お人好の日本人を造ってしまった一因は、歴史教育で明治維新の前後(どうして日本だけが植民地化を免れたか)から太平洋戦争後(どうして北海道が旧ソ連に占領されなかったのか)の期間が抜け落ちているためではないかと言った話題に広がりました。

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