第8回 智の泉談話会 報告

 

  • 開催日時: 2021年8月28日(土) 14時-16時
  • 開催場所: テラプロジェクト Dゾーン
  • 参加者:  企業賛正会員:1社(3名)
          個人会員:7名
          事務局 :6名     計:16名 
  • 話題提供者 : 大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 
  •           応用生命科学専攻  岡澤 敦司 准教授

5 話 題:「アフリカに飢餓をもたらす寄生植物の立ち向かう」

 世界の飢餓人口は、2000年頃から約8億人で推移している。2050年には、8.4億人になるとの推計もある。人口当りの飢餓人口が多い国は、アフリカ、南・東南アジア、中南米に多い。SDG’sでも、飢餓の克服は貧困に次いで二番目のゴールに掲げられている。

 アフリカの国、スーダンは、エジプトの南で、西はチャドと、南は南スーダン・エチオピアと接している。スーダンは、砂漠地帯にあるが緑が多い。白ナイルと青ナイルの合流点に、首都のハルツームがある。

大阪府立大学は、神戸大学、鳥取大学とスーダンの大学・政府と共同で、平成22年から「根寄生雑草克服によるスーダン乾燥地農業開発」に取り組んできた。更に、平成28年からは、「ストライガ防除による食料安全保障と貧困克服」に取り組んでいる。

 根寄生雑草とは、穀物などの農作物の根に寄生する寄生植物である。寄生植物というと特異な植物を思われがちだが、約42万種の植物の内、約4,500種が寄生植物で、全植物の約1%が寄生植物である。寄生植物は、宿主植物に寄生して水分および栄養分を奪い取って生育する。大きな花で有名なラフレシアも寄生植物で、光合成をしない全寄生植物である。ヤドリギは、光合成を行うので半寄生植物と言われる。お香の重要な原料であるビャクダンも半寄生植物で、このために栽培が難しい。ネナシカズラも、光合成を行わない全寄生植物である。ナンバンギセルは、イネ科に寄生する葉緑素を持たない、全寄生植物である。このように、様々のタイプの寄生植物がある。寄生植物は進化の過程で発生し、広範囲の科・属に広がっている。

 スーダンで問題となっているのは、ハマウツボ科ストライガ属の根寄生雑草である。ストライガは、イネ科植物に寄生する半寄生植物で、スーダンの主要穀物であるソルガムを全滅へ追いやることもある。アフリカのサハラ砂漠以南で猛威を振るい、被害額は一兆円、被害農地は5,000万haに及んでいる。このため、ストライガは「魔女」の雑草と恐れられ、約3億人の生活を脅かし時には食料不足に陥れている。

 ハマウツボ科には、ストライガ属の他に、オロバンキ属の根寄生雑草がある。オロバンキ属のオロバンキは全寄生植物で、地中海沿岸、中東地域で大きな被害を出していた。しかし、現在はドイツや東欧へも広がっている。オロバンキの被害農地は、2,000万haに及んでいる。アフリカは、南部はストライガ属の、北部はオロバンキ属の被害に喘いでいる。

 同じくオロバンキ属のヤセウツボは外来植物で、千葉県の成田や横浜に多かった。現在では、三田や新三田にも自生していて、研究用の試料が入手し易くなった。オロバンキ属は、宿主植物の分泌するホルモン様物質に誘導されて、種が出芽して宿主植物の根に取り付く。ストライガ属もオロバンキ属も、個体当り数万粒もの種子を生産し、その種子が小さい上に土壌中で10年以上生存可能である。このため、一度畑に侵入されると除くことは不可能である。

 ストライガ属やオロバンキ属の種子が発芽する時、デンプン質や脂質が消費されることがない。日本で入手可能なヤセウツボで、ストライガ属やオロバンキ属の種子の貯蔵物質を探したところ、三糖の一種であるプランテオース(ガラクトース・フルクトース・グルコース)であった。種子は、発芽時に先ず、胚乳のプランテオースを胚のシンク細胞表面へ輸送する。次にシンク細胞表面でプランテオースをガラクトースとスクロース(フルクトース・グルコース)へ酵素分解する。最後に、インベルターセがスクロースをインベルターセでフルクトースとグルコースへ分解して、細胞内へ取り込みエネルギーを獲ている。そこで、プランテオース分解 酵素を阻害して、ストライガ属やオロバンキ属を防除する方法を研究した。

 先ず、プランテオース分解酵素の遺伝子を特定して、大腸菌で発現させた。得られた酵素たんぱく質を精製して、プランテオース分解酵素OmAGAL2を手に入れた。プランテオース分解酵素OmAGAL2の阻害剤を探索したところ、28種の物質に阻害活性があった。一方、自然物でアミノ糖の一種であるノジリマイシンにも、発芽阻害活性が見いだされた。放線菌にノジリマイシンを生産させて、その培養液を希釈して圃場へ散布してストライガ属やオロバンキ属の発芽を抑え込む方法を試験している。ノジリマイシンは、生物の生産する物質であることから、環境との親和性が高い。ノジリマイシンの誘導体であるデオキシノジリマイシンは桑の葉に含まれ血糖抑制作用が認められていて、桑の葉が健康食品となっている。

6  事務局後書

寄生植物の脅威を初めて知りました。岡澤准教授から、ストライガは水稲には寄生しないとお聞きして、少し安心しました。話題提供後に、「宿主植物を全滅させてしまうと、寄生植物が死に絶えるのではない?」というご質問がありました。確かに、宿主植物が死に絶えるが、ストライガはその前に種子を生産し土壌中に残している。このため、次の耕作で宿主植物が生長すると、発芽して根に寄生する。このサイクルが繰り返されるので、寄生植物が死に絶えない。また、「除草剤耐性のソルガムなどを作出すれば、寄生植物だけを除草できるでしょうか」との質問があった。ソルガムには、まだラウンドアップ耐性品種がない。もし、ラウンドアップ耐性品種ができても、除草剤を分解する酵素を寄生植物が宿主植物から取り込んで、除草剤が効かないことも予想される。


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