第三回:智の木協会副理事長 黒田錦吾 「ガーデンオフィスへの思い」

 私達は今日、豊かさと便利さを手に入れましたが、それと引換えに多くの自然や動物、人間性までも無くしそうになっています。そのことに漸く気付き、各国の行政、民間レベルで環境保護ための啓蒙活動、保護活動、国際間の合意が地球規模で進められていますが、それぞれの思惑やエゴにより総論賛成各論反対で本質の解決に向かって順調に進んでいないのが現状です。

 我々の日常生活でも、満員電車の通勤、無味乾燥なオフィスで長時間勤務、ほとんど自然を感じる余裕すら無い毎日・・・ふと鏡に映った正気の無い無表情な自分の顔に驚かれた経験はありませんか?

 本来、私達の祖先は太陽が昇ると活動をはじめ、沈むと休むという自然との共生生活を長らくしてきましたが、今日のような高度情報化社会で生活をするようになり、自然を皮膚感覚で感じる心の余裕が無くなり、感激や感動する五感も衰えてきています。
特に都会では真っ青な空、真っ白い雲、満天の星空を眺める機会も少なく、空の青さに清清しさを貰ったり、新緑の木の勢いに元気付けられたり、せせらぎの音や傍らにさりげなく首を傾ける野草に愛しさを感じる機会はめっきり少なくなりました。子供のころに夢中で遊んだとき目にした、蝶、トンボ、フナ、メダカ、ドジョウなどの小動物や、緑などの自然はどこに消えてしまったのでしょう。

 日本は、江戸時代には既に樹花の種類が豊富で、造園技術の高さは諸外国の使節や宣教師に驚きを与え、高い関心と評価を得ていましたが、反面、その価値を過小評価したためか、多くの樹花が海外へ持ち去られ、その原種が日本に存在しないという話を聞きますと残念に思うのと寂しさも感じます。

 山紫水明の国「日本」には四季があり、土壌や水に恵まれ、梅、桜、つつじ、五月、菖蒲、紫陽花、菊、楓と樹花は豊富です。また、花見や俳句の会などを開くことで季節を詠み、衣装までも季節の色に合わせる文化レベルの高い国でした。
その後、文化レベルは後退したものの、梅、桜、紅葉の季節には花見や紅葉狩が身近なものとなり、特に桜は開花情報が報じられるほど国民に人気の高い花となりました。寒かった冬から抜け出し人々の活動が活発になると、否、桜が咲くから人がソワソワするのか、一斉に花が咲き、満開になる勢い、上品な薄ピンクの華やかさ、アッという間にはらはらと散る儚さが日本人の美意識と心情に合い、数多くの歌が残されているのも桜の花が一番です。
個人的にも四月生まれのためか何か桜の花に惹かれます。

 さて、長らくオフィスワーカーとしての経験より、オフィスに対する思いを述べておきます。
人生のゴールデンタイムを会社で過ごすオフィスワーカーは知的創造性の高さと効率のよい働き方への変革を求められています。その為には働く場所が快適で創造力を発揮できる整備された空間でこそ初めて仕事の変革ができると考えています。
疲れた目を休めてくれる緑、開放された時にリラックスできる緑、スペースにほどよく配置された緑、あたかも自然の中で働いているようなガーデンオフィスの提供です。室内の光や水遣りが少なくても育ち、冬の低温に強く、乾燥した室内でも調湿能力を持つ樹花、バクテリアの発生しにくい土壌等、関連技術の開発も必要になってきます。

 「智の木協会」は、産、学を中心として広く一般人を巻き込み、樹花に関心、知的好奇心を持つ人達が共に智恵を集め、樹花が持つ不思議な力と可能性を更に研究、開発、情報発信して、身近に樹花を感じる環境を作る、ユニークな協会です。
人間性豊かな環境を取り戻すことで樹花に対する関心が高まり裾野の広い活動に繋がっていきます。智の木協会が多くの方々の関心とご支持を受け、力強く連綿として続く活動になっていくものと多くの期待を寄せています。

智の木協会 副理事長 黒田錦吾(2009.9.18)

(1)海外のオフィス事例

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